2025-01-21

スターフロンティアのオーディションに参加した話

2024年末から2025年始にかけて、AI画像生成界隈(主にX上)ではカードゲームのスターフロンティアの話題が盛り上がりを見せました。

スターフロンティアというのはカードゲームの名称で、今回、画像生成AIのユーザー界隈が盛り上がった理由は、カードとして使われるAI生成画像のイラストを募集するオーディションが開催されたことによります。

まずスターフロンティアのカードゲームを遊ぶためにはスターターパックが必要になりますが、このスターターパックにはSentakuさんねねさんHakushiさんというAI画像生成者さんが参加されて商品化されました。

年末年始のイベントとなったスターフロンティアオーディション(コンテスト)というのは、このスターターパックとして新たに追加されるカードの絵柄や、1枚単品で販売される追加用のブースターパックに採用されるためのオーディションになります。

スターフロンティアのオーディション

スターフロンティアのオーディション(スタフロオーディション)は、竜王祭、電王祭、新星祭という3つの部門で開催されました。

竜王祭は竜や竜人の絵柄を募集するオーディションで、7名の方が選ばれたのち、それぞれが生成した7枚をまとめたスターターパックとして販売されるものです。

電王祭はサイバーパンク系の絵柄を募集するオーディションで、1名の方が選ばれたのち、スターターパックに封入される画像7枚を任されるものです。

新星祭は竜王祭や電王祭と異なり、主として追加のカードとして強化するための1枚売りのブースターパックとして採用されるものになります。こちらは絵柄の内容に指定はなく、好きなものを作って応募しようという内容でした。

竜王祭、電王祭、新星祭すべて参加してみた

よくXのスペースを聴かせていただいているSentakuさんがこのスターフロンティアのオーディションについて言及されていましたので、私も参加してみることにしました。おそらく狙ってのことだと思いますが、オーディションの開催期間が年末年始のお休み期間と重なっていたので、参加しやすかったという理由もあります。

竜王祭について

まず2024年末、竜王祭に参加するための画像作りから入ったのですが、今回のスタフロオーディションは気軽に参加してもらうことを意図してだと思いますが、募集の要項がかなり緩めでした。

竜王祭については

テーマは 竜人、ドラゴン、恐竜! 竜の力と美しさ、圧倒的な存在感を自由に描き出そう! 惑星ホルス -竜と契りし者たち- のデッキにイラストが収録される大チャンス!

この文章をたよりにカードの絵柄を模索していくことになります。

最初は竜人を作ってみたのですが、竜人というのが人の顔を持った竜の要素を持つ生物のことなのか、竜の頭を持つ人型の生物のことなのかがオーディションのテキストだけでは判断がつきません。

また、「竜と契りし者たち」との副題が付されていることから竜と人間が共存する星かもしれないと考え、上や下のような絵柄で生成してみたのですが、もしかすると契るのは(カード外の)プレイヤーと竜の話であって惑星ホルスに人間は生活していない?と悩んで結局竜人や契りをテーマにするのは諦めることにしました。

そこから生成を竜にシフト。竜としてどのようなテイストが求められているのか、こちらも「圧倒的な存在感を自由に描き出そう!」とのことなので、自由に作ってはみるものの、カードとして何が求められているのかイメージが湧きにくく難儀。

結局、途中からは自分が頭の中で思い描いているイメージをいかに絵柄として生成できるかという課題に置き変わりはじめ、できあがったのが下の竜と太陽のシンプルな画像でした。

イメージを作り上げる中で意識するようになったのは、初代Wizardryのパッケージに描かれているドラゴンの絵だったりします。あまり色味が使われておらず、どちらかというと線画的なシンプルな画であるにもかかわらず、ずっと親しまれ続けるだけの普遍性と存在感がある。

そんな画像を作れたら、カード化されたときやパッケージに使われたときにインパクトがあるかなという思いもありました。

一応、スタフロオーディションの「圧倒的な存在感」というのを考慮して、あまり具体的に描画するのではなく謎めいた雰囲気を残すほうが存在感も増すのではないかと考え、竜王祭はこの画像で参加することにしました。

電王祭について

続いて、2025年始はスターターパックの7枚すべて任されるという電王祭に参加するための画像を生成。

電王祭については、

テーマは サイバーパンク! 未来都市の光と闇、電脳の英雄たちをあなたの独創的なタッチで描き出せ! 惑星エーテルニア -遥か彼方の英雄- のデッキを彩る栄誉を手に!

という文章のみが示されているのですが、竜王祭の画像を生成する際どのような絵柄が求められているのか非常に悩んだこともあって、今回は何かもう少しでも情報が欲しい。

との思いでスタフロオーディションのポストを再度確認してみると、そのコメント(リプ)の中にスターターパックとして参加されているねねさんの以下のような投稿がありました。

そこには、各惑星の初期イメージとして電王祭に該当するETHERNIAには「神秘系(サイバーSF)イラストテイスト(アニメ調)」との情報があります。

この情報を参考に、最終的には神秘的な雰囲気も含めた、未来都市的サイバーSF風である程度イラスト・アニメ側に振った(つまり3D寄りではなくフラットカラー的な要素を強めた)画像になるよう生成してみることにしました。

相当な枚数を生成した中から構図を詰めていき、手や光の配置もデザイン的に綺麗に見えるように微調整を繰り返して最終的には次の1枚を応募することにしました。

竜王祭のほうで考えすぎてしまったので、こちらはもう少し「それっぽい」「サイバーパンクといえば」的な感じで素直な絵柄になるように調整してみた……つもりです。

新星祭について

新星祭はオーディションの要項に

あなたのアイデアや個性を存分に発揮して参加しよう!選ばれた作品は “ブースターパック” もしくは”スターターデッキ”に収録されます!

とありましたので、最初はメイドさんの画像を投稿してみたのですが(笑)途中で思い直して電王祭からの派生で別の雰囲気のサイバーパンクな画像を投稿することになりました。

スタフロオーディションの(個人的な)結果

さて、オーディションの結果はどうだったのかですが……。

竜王祭落選
電王祭落選
新星祭採用

という結果になりました。かなりの時間と労力を割いた竜王祭と電王祭は採用ならず、気楽に生成した新星祭だけ採用という、ありがちといえばありがちな結末になりました。

電王祭は、結果論としてはコンテスト概要に記載されていた未来都市の光と闇とか初期設定の神秘的とかは考慮する必要なかったみたいです。(設定ではなく画像自体の「映え」を詰めていくほうが選ばれる可能性を高められたかも?)

最後の新星祭で採用された画像は、次のようなカードとして商品化されたようです。

何を作ればよいのかの想定が難しかった

オーディションに参加してみた感想。上でも触れましたが、オーディションの要項がかなりザックリとしたものであるため、何を作ったらよいのか判断がつかなくてとても難しかったです。

たとえばこれが単純に「竜の画像コンテスト」とかであれば、要項から想像して自分なりの竜の画像を生成すればよく、仮にその画像がコンテストに入選しなかったとしても「審査員のイメージとは離れてしまったのかな」で済むのですが、今回のスタフロオーディションはカード化を前提とする企画です。

そのため、どんなカードが求められているのかがある程度わからないと、応募する側としてはあっちを模索したりこっちを模索したり、右往左往で時間ばかりかかってなかなか最終的な落とし所が見えてきませんし、精力もそれだけ広く薄く分散してしまうことにもなります。惑星ごとに異なる世界観も設定されているようなので、そこもわからないと想像をどちらに広げてよいのかもわかりにくい。

また、要項が抽象的であることに加えて応募作品が日に日に続々と公開されていく状況だったため、自分の中で「この解釈のもとで、この画像に至った」という思いが相対化されて揺らぎ、そういった意味での迷いも生じやすかったです。「この画像で応募してみたものの、他の応募者の傾向を見ると、もしかしてこういう考えは勘違いだった?」とか「とにかく派手な画像が求められている?」とか、前提となる情報から幹をつくれないので考えがブレてしまいやすいのです。

カード化する場合、どのあたりにどのくらいの情報が掲載される可能性があるか、という形式的な情報もほしいところでしたが(そうでないと、画角ギリギリまで描画してしまったことで顔に情報が載らざるを得ずカード化が難しい、よって却下という可能性も考えられますし)、なにより、惑星ごとの世界観や設定を資料として示してもらえたら方向性を見いだしやすかったです。カード化される前提でのオーディションであるならカード化を狙って応募するわけですし、仮に(今回のように)結果は落選となっても、自分なりに情報を解釈した上で生成した結果であるなら、納得感も得られます。

特に電王祭については、スターターパック7枚すべてを任せるという前提なので、世界観や資料が用意されていてもそれでハードルが高く感じて応募を控えるという人も少ないはず。今回は「なんでもあり!」の新星祭が用意されていたので、竜王祭はもう少し前提情報を、電王祭はかなりの前提情報を欲しかったなと個人的には思いました。

あと、全体としては企画者さんの考えは緩くて臨機応変なのか、つまり応募されたカードによって設定等をある程度見直してフレキシブルに対応する意図があるのか、それとも元々ある(はずの)設定に沿うものでないとカード化されないのか、この辺も参加する側としては検討がつかないため判断に迷う場面が多かったです。

ブースターパックに採用されたことを実感しにくいかも?

今回、ブースターパックのカードは1点もの、世界に1枚だけのカードというのを売りにされています。この部分、ゲームを購入して遊ぶ人にとっては「自分だけしか持っていない唯一のカード」「ブースターパックを購入すると絶対に違うカードを入手できる(ダブらない)」という、他のカードゲームではほとんど見られない仕様になっています。

自分がプレイやーなら面白さを感じるところかもしれませんが、ブースターパックの絵柄に採用された側として一区切りがついて思うのは、スターターパックとは異なり「自分のカードが本当に採用されたのか」「誰かの手に渡ったのか」ということが非常に見えづらいため、結局どうなったのかがよくわからないところがあるなということ。

また、もし今回のように唯一のカードという仕様ではなく、一般的なカードゲームと同様にブースターパックを購入した際には自分の絵柄のカードが出るかもしれない状況であれば、新星祭に参加したAI画像生成者はブースターパックを購入する楽しみも増すと思います。「おおっ、自分の引いた!」「自分のは出なかったけど○○さんのは出た」って結構楽しいと思うんですよね。今回はその体験はできないので、なおさら「どうなった?」感が強いかも。

この辺を端的に言ってしまえば、新星祭に採用された結果をあまり実感しにくい、ということになるでしょうか。

※私は後日ねねさんからカード化した後の絵柄データ(上で挿入したXの投稿に配置したもの)をもらえましたので、その点では「どんな風になったんだろう?」という疑問は半分くらい解消することができましたが。

※追記:2025年1月22日、スタフロのDiscordサーバが参加者に公開され、そこで新星祭のカードデータが掲載されました。

この曖昧さを前提とするなら、新星祭のようにブースターパックに一点もので封入される前提であれば、あまり気負わずに生成して「選ばれたら儲けもの」くらいに捉えておくほうが気持ち的には楽なのかもしれません。

まあそれもあって、今回のスタフロオーディションではスターターパック封入への道が開ける、つまり購入したときに自分のカードが出てくる可能性があり、また多人数の手に取ってもらえる可能性のある竜王祭、電王祭に選ばれる必要があると考えていたのですが、残念ながらいずれも落選してしまったのは前述のとおりです。

AI画像活用の1つの形としての「新たな広がり」

といった感じで、個人的には何を努力すればよいのかわかりにくい状況での不完全燃焼感などはありましたが、AI画像を活用して多人数で盛り上がる1つのかたちとして、今回のスターフロンティアのカードゲームが商品化されたことは新たな広がりですよね。

年末年始にスタフロオーディションで盛り上がれたこと、その後のBoard Game Business Expo2025でもブースターパック完売など盛況だったようですので、「祭」という意味では楽しい企画でした。

私はこの記事で、スタフロオーディションの一参加者として感じたことを勝手にまとめているだけですが、企画者の方やねねさん、Sentakuさん、Hakushiさんなど今回のオーディションを認知してもらおう・盛り上げようと動いた方にはそれぞれの大変さや手間があったはず。

最後になってしまいましたが、オーディションを企画いただいたことに感謝して、まずはBoard Game Business Expo2025お疲れさまでしたとお伝えしたいです。

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